ちんまりとした庭にも社の建物にも人の気配はないが、いかにもこざっぱりと整っている。あたりをゆっくり見まわすのを許さないように童子らはひょこひょこと先を行く。庭をぬけると切り崩した岩肌があらわれる。淡褐色の花崗岩らしい岩肌に一箇所、洞がうがたれていた。
洞の入口は骨のような白っぽくて乾いた木枠で支えられている。入口こそ身をかがめなければならなかったが、そこを過ぎると大人が立って歩けるほどの高さがあった。ゆるやかな石段が下向きに続き、裸電球がところどころで黄色く灯っている。
十段ほど下りると地面は平らになり、しばらく行くと板張りの床になった。気づくと周りの壁も板張りである。右左に蛇行してるので先は見通せない。何度か階段を上り下りしたがそれは石段ではなく木の階段だった。
不意に明るい所へ出たと思ったら、そこは日本家屋の広い土間である。童子らは音も立てずに板間に上がる。私もそれについて上がろうとすると、靴を脱げ、と身振りで咎められる。彼らは履いたままだったのでそれに倣ったのに、と少々心外な感じがした。
板間には囲炉裏が切ってあって自在鉤が吊ってある。火の気はない。奥の方に蹴上げ板のない梯子のような階段があって、童子らはそこを登っていく。あわててその後を追う。
階段を上りきった童子らが扉を開けると外だった。どうやらかなりの高さの山の中腹のようだ。山肌に露出した岩に扉がついている。谷を隔てた対面の岩壁に巨大な壁画があった。異国の神々の図像。峻険な岩肌にどうやって描いたのか、想像するだけでぞっとする。
帰りに日本家屋の家人らしき人に会った。普通のおばさんだった。



